読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Nikkei225オプション日記

日経225オプションをこよなく愛するためのサイト

料金の高い「官報」サービス。法令の公布は国民に届いているのだろうか?

SeifuKankoubutsuSC

倒産、自己破産の唯一の一次情報たる官報

仕事で、携帯電話のSMS(Short Message Service)を利用して顧客にビジネス情報をダイレイクトに提供できないかという課題がありで、こうしたサービスを提供している会社の方とお会いしました。その際にいただいたパンフレットの中に、官報の破産者情報をデータベース化したサービスというものがありました。会社の倒産情報については、東京商工リサーチとか、帝国データバンクといったものが有名ですが、個人についてもこうしたサービスがあり、お金を貸す銀行やノンバンクが利用しているということを知りました。はたして何を根拠にこうした情報を得ているのだろうと、個人的趣味からちょこちょこ調べると、そもそも企業倒産等(破産、民事再生)、個人の破産(自己破産)についての一次情報は、すべて官報の公告なのだとわかりました。民間の倒産・破産情報サービスは裁判所の公告、つまり官報の公告をもとに作成し、すべてをここに頼っています。

民主主義国家の制度の上に成り立つ「官報

官報というものの存在ついては、大学時代に読んだ石原慎太郎の小説の何かで記憶しているものの、今まで現物を一度も目にしたことはありませんでした。こんなでも私でも法学士なのですから、日本の大学教育は根本的に間違っているのでしょう。それはさておき、官報は、倒産や破産という小さな世界のものでは決してありません。明治時代から続く由緒正しき日本の国が発行する唯一の法令公布の機関紙であり、叙勲、皇室事項、調達情報(入札情報)、地方自治体や裁判所が発する公告など重要な情報が掲載されています。官報の現在の法的な立場は次のとおりです。

官報、法令全書、職員録等ノ発行ニ関スル件(昭和十八年閣令大蔵省令第一号)を改正する命令を次のように定める。
官報
第一条   官報は、憲法改正詔書、法律、政令、条約、内閣官房令、内閣府令、省令、規則、庁令、訓令、告示、国会事項、裁判所事項、人事異動、叙位・叙勲、褒賞、皇室事項、官庁報告、資料、地方自治事項及び公告等を掲載するものとする。
官報及び法令全書に関する内閣府令 (昭和二十四年六月一日総理府・大蔵省令第一号 官報及び法令全書に関する内閣府令

まあ、国民生活にとって最重要な情報と言えば、やはり法令の公告でしょう。法律制定の情報を国民に知らせることは、民主主義の根幹にかかわります。また、法律を制定しても、その法律の存在を国民が知らなければ、法律は守られませんので、実効性の伴わない名ばかり法律、机上の空論だけが残ることになります。だからこそ、法律の施行前には、公布というプロセスが必ず存在します。そして、その法令の制定プロセスに官報は大きく関わっています。

法律は、法律の成立後、後議院の議長から内閣を経由して奏上された日から30日以内に公布されなければなりません法律の公布に当たっては、公布のための閣議決定を経た上、官報に掲載されることによって行われます。官報では、公布された法律について、一般の理解に資するため「法令のあらまし」が掲載されています。) 

・「公布」は、成立した法律を一般に周知させる目的で、国民が知ることのできる状態に置くことをいい、法律が現実に発効し、作用するためには、それが公布されることが必要です。なお、法律の効力が一般的、現実的に発動し、作用することになることを「施行」といい、公布された法律がいつから施行されるかについては、通常、その法律の附則で定められています。

 (内閣法制局HPより http://www.clb.go.jp/law/process.html

 しかしながら、官報は、その存在をあまり国民に知られていません。いや、ほとんどの国民があることすら知らない、仮に存在を知っていても一度も見たことがないというのが実態なのではないでしょうか。官報の具体的なサンプルは次のページで見ることができますので、ご確認ください。https://kanpou.npb.go.jp/

官報」が有料(新聞購読料並み)であることの不思議

民主主義国家に不可欠な法令その他の公告機能を独占的に握っているにもかかわらず、この官報は、今日まで有料の状態が続いています。現在の価格は驚くこと勿れ、1ヶ月 3,641円(本体 1,520円+消費税121円+送料2,000円)。新聞の購読料並みの高さです。これでは「一応、官報に載せたから」という為政者のアリバイ作りにしかなっていません。しかも、金がかかる。法令の制定を知りたい奴は、金を払えと言っているようなものです。まさに、官僚制国家の本懐、「民は之に由らしむべし、之を知らしむべからず」といったところでしょうか。

30日以内はPDFでみれるけど。料金の高い官報の記事検索サービス

それでも現在はインターネット時代。WEB環境があれば、発行から30日以内の「官報」についてはPDFで閲覧が可能です。しかし、30日を過ぎたバックナンバーは目次と主要箇所のみを確認できるだけです。また、記事検索の機能も充実していません。そうなると、やはり有料の「官報情報検索サービス」を使わざるを得ません。こちらも結構高いです。月額2,160円(定期購読者以外、記事検索・日付検索つき)。しかもインターネットで申し込みを完結できず、PDFの申込書を印刷して「最寄りの官報販売所へお申し込み下さい。」だってさ。なんというアナログ社会・・・・・。官報情報検索サービス ご利用案内

一次情報を直接知る手段を模索し始めた国民

民主主義国家というものを考えた時、法令の公告に情報媒体を利用するのであれば、その情報媒体はできるだけ無料で、すべての人にアクセスできるものでなくてはなりません。法令の公告機能を「官報」に独占的に付与しているのであれば、当然、「官報」は無料にすべきだと思います。そうしないと、資力のない人々は法令を知ることができず、自分の周りで国家がどのような取り決めをしたのかすらわからない状態となります。勿論、テレビや新聞といったメディアが現在はあり、「官報」に代わってその機能を代替しているという側面はあります。ただほとんどが営利企業であったり、特定の資本の傘下にメディアが集中してしまっていたりしています。国民の間では、バイアスがかかった情報ばかりを流しているのではないかという疑問、不信感が広がっています。福島の原子力発電所の爆発事故、アメリカ大統領選挙などを経て、今や国民は編集された二次情報ではなく、一次情報を生のままに受け取りたい欲求が高まっています。

それにこたえる形なのか、安倍政権は2020年までを集中投資期間として、公共機関のオープンデータ化を進める方針を明確に打ち出し、国民へ直接情報を提供するインフラ作りに動き出しています。

平成28年12月19日 未来投資会議 | 平成28年 | 総理の一日 | 総理大臣 | 首相官邸ホームページ

プログラマー矢野悟さんの存在を知る

官報」について調べていくうちに私は、あるプログラマーの存在を知ることになりました。矢野悟さんという方です。Wikipediaにもその名前を見つけることができることから、IT界隈では有名な人なのかもしれません。「satoru.net」という様々なサービスを提供するページがあり、その中で彼が作成した「官報検索!」というサイトを見つけました。「官報検索!」は非常によくできています。そして、無料。 

官報検索! - 官報を全文検索できる無料サービス

キーワードから検索できるので、調べやすい。まあ、近々の記事しか検索できないのは無料でサービスをすることの限界なのかのもしれません。ただ、少なくとも国民に無料で官報情報を提供するという方向性は完全に正しいと思います。しかしながら、こうした優秀なプログラマの理想の後押しをしてやれないのが現在の政府組織の限界。このサービスの登場後、国立印刷局は公開されている「官報」のPDFの画像について検索機能によって認識できていた文字情報を認識できないように変更してしています。そして、このことについて2014年に矢野氏が要望書を出しているにもかかわらず、私の確認する限り、今日まで修正されていません。

『官報』のオープンデータ化、改善を求める要請について

なぜこのようなことが起こってしまっているのか、私にはわかりません。わかる方がいれば教えてください。国立印刷局独立行政法人化による「官報」の事業化や著作権の問題、そして「官報」に群がる利権などが邪魔をしているのかもしれません。

官報情報検索サービス」のオープン化、無料化を

官報」が有料だった理由を考えると、情報の伝達に輸送、配達が必須であるという紙媒体の限界性によるものが大きかったと思います。インターネットの発達によって、現在は、WEBにアップさえすれば電子によって情報は伝達できます。法令情報の公布を有料化せざるを得ない時代は、技術の進歩によって克服できました。そして、データベースをWEBにつなぎさえすれば、確度が高く、利用しやすい情報を国民に提供できます。そして、データベースの連携は有用な情報を生み出すと同時に、情報の信頼性も高めていけるのだということが理解されつつあります。新聞にコピペされた法令よりも、官報の一次情報をそのままリンクしたほうが正確で信頼性が高いのです。

官報」のオープン化、無料化は民主的な電子政府の実現にとって大きな位置を占めています。独立行政法人という形態が、これを阻害するならば元に戻し、有能なプログラマがこのプロジェクトの推進となれるよう政治は全力で後押しする必要があるのではないでしょうか。