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プレミアムフライデーから読み取れる全体主義の雰囲気

時短をすれば、個人消費を回復させることが本当にできるのでしょうか。GDP600兆円を目標に掲げる安倍政権は、プレミアムフライデーの構想に着手し始めました。月末の金曜日は終業時間を早め(15:00)、民間企業に様々なイベントをしてもらい、個人消費を喚起するという政策のようです。

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経団連は政府に先行して、10月にもプレミアムフライデーの実行に着手するそうです。それにしても、なんというかバカバカしい政策だなあと思います。

政府は消費が拡大しないのは、サラリーマンが働きすぎで、消費する時間がないからという問題意識を持っているのでしょうか。そういう人は稀にいるかもしれませんが完全に少数です。個人消費が拡大しないのは単純に個人にお金がないからです。賃金が上がらないからです。

国税庁 民間給与実態統計調査より)

 2004年にダウンした民間給与水準はいったん下がった後、なべ底のように下に這いつくばったままです。勿論、非正規社員の増加や定年制の延長(65歳)による再雇用によって平均給与が押し下げられたという見方はありますが、若年層の給与が上がらない現実については各種統計に裏付けられています。

 まあ、プレミアムフライデーは、経済的側面だけから判断すれば、やらないよりはやったほうがよいという程度でしょうか。効果を過大に見積もるするならば、机上の空論のそしりを受けることになります。税金を使うのであれば、費用や時間のコストについてその逸失利益を含めてきちんと検証したほうが良いでしょう。

個人的な見解を言うならば、こうした政策に人員と時間を割くよりも、他のことに取り組んだほうが良いと思います。企業の内部留保を吐き出させるとか、パナマ文書に代表される国際的な税の脱法行為の規制を強化する一方で、従業員への分配については税の優遇措置するとか、国民一人当たり、100万円を配るくらいの大規模なヘリコプターマネー政策をうつとか、やることはいくらでもあります。すでに日銀は、株価対策のために年間7兆円のETFを購入しています。企業の株は良くて、個人への直接給付がダメということはないでしょう。

最後に、時短と従業員のやる気について述べたいと思います。日本人は欧米と違って、労働を労苦としてマイナスにとらえるよりむしろ、自分自身を成長させ、社会貢献になるものだというプラスとして考えている人たちが多くいます。20代の若年層はわかりませんが、40代くらいになるとその傾向は強くなっていきます。残業代など不要だから納得のいく仕事をさせてほしいと考えている日本人は思ったより多いのではないでしょうか。終業時間を超えても、難しいことにチャレンジし、解決したときの喜びを得たいと考える人も多いのです。ブラック企業などの例外はありますが、一斉に一律に仕事場から追い出すような政策は、こうした日本人の労働意欲を奪います。

経団連のような経営者の上部団体が政策の決定プロセスに介入し、物事を決めていくことはあまり良いことではありません。重要産業統制団体懇談会や産業報国会といった全体主義の戦時体制を想起させます。政策はもっと多元的なプロセスから行うべきです。また、そうした上部団体を中心とする政治過程によって決められた政策が企業や労働者のニーズを適切に反映できるならまだいいのですが、公務員組織然とした経団連企業群のニーズは、日本の多様な企業群をカバーするどころか、およそかけ離れたところにあるとみたほうが正確のように思えます。請負契約のような成果物を収めること成り立つ企業等、時短をしていてはその存続すら危うくなる企業もあります。また、時間給で働いている非正規労働者に対しては所得獲得機会を奪う厳しいものになるでしょう。

全体主義の傾向は、左派勢力だけではなく、どうやら政府の側にもあるようです。