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総務官僚「鈴木康雄」と放送法 ワンセグNHK受信料問題の法的根拠

籾井勝人NHK会長の参戦

NHKワンセグ裁判が、また面白くなってきました。この辺でと幕引きを図る総務省の要請を飛ぶ鳥を落とす勢いの籾井勝人NHK会長が拒否し、まさに司法、国民、総務省NHKを中心のバトルロイヤルが開催されました。

ワンセグ受信料、徴収続ける意向…NHK会長 (読売新聞) - Yahoo!ニュース

籾井さんはやっぱりすごいです。監督官庁とは言え、決して一枚岩でない総務省など恐れるに足らずです。まとまりのない組織は独裁色の強い組織によく戦争で負けますが、ゴング序盤のジャブではNHK籾井さんが総務省を圧倒しています。

放送法戦後レジームの残滓

しかしまあ、この放送法という法律は読めば読むほどむちゃくちゃです。素直に読めば、設立当初のテレビ放送を何とか軌道に乗せるため、見る見ないを問わずテレビ受信機を持つ人すべての世帯にNHKとの契約義務を定めた法律です。この法律が、半世紀もの間生きながらえたこと自体が異常と言えば異常なのです。テレビ放送はとっくの昔に自立し、離陸を果たしているはずなのに「公共放送」という鵺のような存在が未だに続いています。国営放送ではなく、国でも民間でもない「公共放送」という形態。GHQの敷いた日本つぶしの典型的な組織、戦後レジームの残滓と言えるでしょう。

この「公共放送」という形態を何とか継続したい総務省NHKが手を変え、品を変え、姿を変える過程で何十回となく放送法が改正されています。しかしながら、受信設備を設置した瞬間から自動的に受信料が入ってくるという経営の根幹部分については、彼らのロビー活動、政治家子弟の局員受け入れもあって、全くと言っていいほど国会で取り上げられることはありませんでした。しかしながら、インターネットなどの新しいメディアが徐々に風穴を開け、ついには国会で放送法64条1項の但し書きにおける「受信を目的としない受信設備」の定義について国会で質問されることになります。

復習の意味で放送法64条1項但し書きを示します。

 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。 

NHKワンセグ付携帯電話から受信料を聴取する根拠

そして、平成19年3月22日の衆議院総務委員会でなされた当時の総務省情報通信政策局長の鈴木康雄参考人の答弁が、今のところ「受信を目的としない受信設備」の解釈についての唯一と言っていい根拠となっています。

『ただいま御指摘の、条文の中にあります「放送の受信を目的としない受信設備」と申しますのは、外形的、客観的にその設置目的が番組の視聴ではないと認められるものでございまして、例えば、電波監視用の受信設備、あるいは受信画質の確認を行うための設備、あるいは、それと同様でございますが、電器店の店頭に陳列されているものもいわば画質確認を行うものと考えられますので、そういった受信設備がこれに該当するものでございまして、個人の意思に係らしめているものではないというふうに解釈しております。』

総務省答弁のポイント

ここで重要なのは、「外形的、客観的にその設置目的が番組の視聴でないと認められるもの」、「個人の意思に係らしめているものではないと解釈」の2つの点です。

前者のポイントは、「ないと認められるもの」 です。最近の国会でも何度か「ないこと証明することは悪魔の証明」だという言葉を聞いたことがあると思います。論証が非常に難しいのです。無論、ないと認められるもの以外はすべて受信設備となり、受信料の支払い義務が生じるという論法です。当時は放送受信機はテレビしか想定していなかったのですから、「ないと認められるもの」ではなく「ないと認められるテレビ」とするのが法律当初の趣旨であったと思います。後者の「個人の意思に係らしめるもではないと解釈」については、受信を目的とする設備であるか否かは個人の意思に関係ないということです。つまり、いくら、テレビゲームを楽しむために買ったテレビだと言ったところで、外から見て放送を受信できるテレビだったら、受信料の支払い義務が生じると鈴木康雄参考人は言っています。しかしながら、この答弁は条文上も全く明らかではなく、かつその解釈となる根拠も特に示していません。しかも、放送法制定から50年以上経った平成19年3月22日時点で「総務省が考える」政府解釈を述べたにすぎないのです。現在時点で、普通に生活している人が条文を読むとこの解釈は違和感がありますし、裁判を通じた法律の確定は現在もなされていないのです。

受信料聴取の大いなる疑問

NHK批判の急先鋒かつ日本の誇る論客、中部大学武田邦彦教授は、お金はサービスの努力やリスクをとった投資をして得るもので、一度法律を作れば、テレビが普及するにしたがって自動的にお金が入ってくる仕組みに、道徳上の違和感があるということを述べられています。いまや、NHKの総予算は7000億円を超え、総資産は1兆円を超えています。中国漁船の進出など沿岸警備に予算が足りないと言われる2016年の海上保安庁の予算が2146億円ですから、その3倍以上をNHKは使っています。はたして、テレビ以外のあらゆる受信設備に対して受信料を科すことは適当でしょうか。

NHK受信料聴取の根拠、当時の答弁者、鈴木康雄参考人は、NTTからタクシーチケットを受領、懲戒の過去

最後に、平成19年3月22日に総務委員会で政府解釈をした当時の総務省情報通信政策局長の鈴木康雄さんは、どのようなキャリアを辿っているのかについて、わかりやすいホームページがありますのでお知らせいたします。

www.japanpost.jp

簡単に言えば、総務省のトップ事務次官になられ、損保ジャパンに天下り、さらに民営化の後退した後の日本郵政に天下るという典型的な官僚のキャリアを辿ることになりました。ちなみに、この方は総務省が管轄するNTTからタクシーチケットを貰った件で懲戒処分を受けている過去あったにもかかわらず、事務次官になりました。

NHK放送法順守の立場から、受信料聴取についても両論併記を

NHKは、総務省情報通信政策局長の鈴木康雄参考人の答弁を根拠にして、受信料を正当化するならば、この鈴木康雄参考人が、NTTからタクシーチケットをもらった件で懲戒処分を受けていること。このとき特許庁の志摩兆一郎及びNTTデータ社員の沖良太郎は逮捕されていることを放送法第4条4項の「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に基づき、ワンセグ受信料聴取の反対意見として両論を併記する形で、国民の知る権利に奉仕していただきたいと思います。

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