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オープンデータをPDFでアップするのは、やめてくれ。東京都の都税情報公開とITの後進性について

Open Data stickers
(出典:ウィキメディア・コモンズ)

税データをPDF形式で公開する東京都庁の後進性

東京オリンピックについての調べ物をしている際に、東京都の税収がどのようになっているのかを見ようと、ググッって見たところ、東京都オープンデータ一覧(試行版)にたどり着きました。東京都オープンデータ一覧(試行版)|東京都

そこで、「都税」のリンク部分をクリックして正直びっくりしました。試行版とは言え、出てきたデータファイルは何と単年のPDFファイルでした。利用者に一生コピペして使用せよというのでしょうか。「税」という重要かつ概念が定式化されているため整ったデータ形式に規格化しやすいものがこの有様です。東京都、少なくとも都の情報通信(IT)を管轄する部署に将来を期待することは非常に難しい印象を受けました。

オープンデータの標準的水準は、XMLJSON形式でのデータ提供

オープンデータの利用を検討している人たちは、おおよその水準として、データ提供者にXML形式やJSON形式の利用を希望しています。最低でもExcelなどの表計算の形式で提供してもらわないと、その後のオープンデータ利用において、利用者が非効率的なコピペの嵐に陥ることが想像できます。もっと言うならば、データ提供者が時系列的なものを保存、公開しないと、その後のデータの蓄積や管理を「利用者」が行ってしまうこととなり、社会全体で同じ仕事を二重に行っている現状と何も変わらなくなります。オープンデータの目的には、<情報を公開すること>と<情報利用の社会的効率化>という2つの側面があり、<情報を公開すること>のところで東京都庁は止まっているという感じがします。

オープンデータ評価指標「5 Star Open Data」について

 www(ワールド・ワイド・ウェブ)を考案し、URL、HTTP、HTML の最初の設計を行ったインターネット生みの親ともいえるティム・バーナーズ=リーは、オープンデータの利用のしやすさについての評価指標を作り、社会のにおけるオープンデータ提供、利用を促進しようとしています。

5stardata.info

「オープンデータ評価指標」をわかりやすく言うと、次の通りです。

内容 データファイル
一つ星 とりあえず、データ公開 PDF
二つ星 構造化データとして公開 Excel、Word
三ツ星 非独占の形式 CSVXML
四つ星 他人からのデータリンクが可能(URIの使用) RDF
五つ星 他のデータリンクを入れた形式 Linked-RDF

少し補足すると、三ツ星は商用の規格(実際はマイクロソフト)によらず、WordやExcelでなくても利用可能であるという意味です。四つ星はWEB上で他のサイトへのデータリンクを可能にしている(わかりやすい例だと他サイトでの埋め込み)、五つ星は四つ星とは逆に他のサイトのデータリンクを自分のオープンデータに入れるということです。四つ星、五つ星は少しわかりにくいのですが、オープンデータの相互乗り入れによって、自身のサイト及び他サイトのオープンデータの正確性を第三者的に担保することやデータベースを連結することによる巨大な社会データベースの構築を念頭に置いています。こういう基準があるにもかかわらず、東京都は「取り合えずデータ公開をしました。うっす。」というレベルで残念ながらとどまっているのです。

東京都のはるか先を行く鯖江市(福井県

行政におけるオープンデータで話題となっているのは鯖江市です。鯖江というと、メガネの生産が有名ですが、地元の高等専門学校電子情報工学科を卒業のIT社長(福野泰介さん)を先頭にして行政情報のオープンデータ化を進めています。鯖江市のホームページを拝見すると、公共施設、公衆トイレ、コミュニティバス経路、避難所、消火栓位置その他の情報をXML形式のデータに直して公開、その情報をgoogleマップと連動させていくような取り組みを多く行っています。

福井県鯖江市>データシティ鯖江(XML,RDFによるオープンデータ化の推進)

政治分野では市議会議員名簿のオープン化、市議会のUsreamによる動画公開も行っています。将来のニュースメディアは、記事情報の信頼性をこうしたオープンデータとの連結によって補強していくようになるのだなあと気づかされました。また、鯖江市は日本の自治体で最初にW3C(ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)へ参加もしています。W3Cとは、Webの世界的な標準化団体で、HTMLはじめ多くのコンピューター言語の仕様がここで決まります。勿論、鯖江市以外の自治体もこうした取り組みを行っていますが、市長がトップダウンで福野さんに任せているので動きが何しろ早いんです。

このままでは、東京都のITの後進性をオリンピックで晒すことに

 安倍首相は、12月19日に総理官邸で開かれた第3回の未来投資会議において、オープンデータの開放を協力に推し進めることを約束しました。

「各省庁や自治体が持つインフラのデータを徹底的に開放し、官民の力を結集して、新たな有望市場を創出してまいります。(中略)

先週施行された『官民データ活用推進基本法』の下、安全・安心に、個人情報に配慮しつつ、オープンデータを強力に推進してまいります。
 IT総合戦略本部の下、官民の専門家からなる司令塔を設置し、そして民間ニーズに即して重点分野を定め、2020年までを集中取組期間として、必要な施策を断行してまいります。関係大臣は議員から提案された具体的な施策と年限を踏まえて検討を進め、直ちに施策を具体化していただきたいと思います。」 

平成28年12月19日 未来投資会議 | 平成28年 | 総理の一日 | 総理大臣 | 首相官邸ホームページ 

 2020年までを集中取組期間としているのは、勿論東京オリンピックを見据えてのものです。最初に述べた東京都のオープンデータの利用規約平成27年3月31日に策定されています。試用版とは言え、9か月たってもデータ提供の本質がまるで分かっていない都税データのPDFでのアップですから、このままいくと本当に、東京、ひいては日本のITの後進性をオリンピックで晒してしまうことになります。小池都知事はリーダーシップを発揮して、専門家(実務家)を司令塔とした行政事務の改革を断行しなければなりません。まあ、それでも総務省の統計局はさすがにまともなので、それを司令塔にして、民間人の協力を仰ぐような形になるかとは思いますが・・・・。いずれにしろ、東京都庁職員はこれまでの仕事のやり方を全面的に変えていただく必要があります。

箱モノより、オープンデータ利用を継続できる行政官をレガシーとして残してほしい。

おそらく、職員自身では仕事のやり方を変えられません。鯖江市の例を挙げるまでもなくオープンデータ政策を断行できたのは旧来の試験で採用された職員では決してなく、高専出身のIT企業社長(アプリ技術者)でした。批判はありますが、外部から人を連れてきて、大幅な権限を委譲、非協力的な職員に対しては分限免職するような厳しさが必要です。そしてこの機会に都庁職員へ情報処理、ITの再教育を徹底的にやり、オリンピック後もオープンデータの実務を継続できる体制を作っていただきたいと思います。

インターネットやデータベースの仕組み考え方などの知識は今やあらゆる行政官に必須となりました。学ぶにはある程度時間が必要ですが、こうした知識をものにした行政官が多くなった時、東京、そして日本の将来は明るいものになります。教育投資は若い人間にだけ必要なものではありません。オリンピック後にどの程度使用されるかわからない箱モノよりも、オープンデータ利用を継続できる行政官というレガシーを残してほしいものです。

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