Nikkei225オプション日記

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有料化(有償化)することを政策目標に。レジ袋有料化とともに全体主義はやってくる。

US Navy 020807-N-0872M-515 A Shopper pays for his purchase at one of the cashier counters inside the Navy Exchange located at Naval Base Little Creek

無料ではなく、レジ袋を有料にしたい東京都

東京都はオリンピック開催の2020年までに小売店で配布されるレジ袋の無料配布をゼロにする目標を掲げるそうです。

東京都は小売店で配布されるレジ袋の無償配布をゼロにする目標を掲げる。近く発表する中期計画「2020年に向けた実行プラン」(仮称)に盛り込む見通し。小売りの業界団体などに協力を要請し、17年度にもレジ袋の廃止や有料化などに向けて協議を始めたい考え。消費者にはマイバッグの持参を改めて呼びかける。

(2016/12/19 20:17日本経済新聞 電子版)

東京都(環境局)は無料配布を呼び掛けているのではありません。なんと有料配布にするように要請しているのです。

民間流通業者が無償でレジ袋を配布することは悪?

民間業者がレジ袋を無償配布することは悪であるから、行政が無料で配る民間業者に対し有料にしてもらうように取り組むという本末転倒のロジックについて、私自身、未だに理解不能、茫然自失気味なのですが、彼らの言いたいことは要するに、「レジ袋のゴミを減らすために、レジ袋自体を有料化する」ということらしいのです。

このロジックは、実は日本各地の自治体で行われてきた「ゴミの有料化」と同じ論理です。「ゴミの量を減らすために、ゴミを有料化する。」というものです。

負担者(レジ袋利用者)の反論する機会は一切なし

これはこれで、非常に問題があると思いますが、今回のケースは、議会という民主的なプロセスを経て住民への負担が決定された自治体のごみ有料化のケースとは異なり、負担となる住民の反論の機会が一切ないまま、流通業者と行政の間で実質的な住民への負担が決定されていくという点でさらに悪質です。また、レジ袋を無料で配布するか、有料で配布するかは民間の経済活動の自由の範囲内の問題にもかかわらず、商売のやり方にまで行政が介入しています。どうしても、東京都がレジ袋のゴミを減らしたいのであれば、<レジ袋の有料化を流通業者に求める>のではなく、<レジ袋を無料配布する流通業者に対し、税法を変えて行政が直接税金を課す>のが自由で民主的な国家の政治プロセスだと思います。はっきり言いますね。これが、全体主義というものなのですよ。

単身のサラリーマンが仕事帰りにスーパーに言って買い物をすると、マイバックがないから余計にお金を取られてしまう事態が進行しています。マイバックを持ってい行けばいいって? 仕事の鞄にマイバックなんて入れられるわけないでしょう。家に一度帰ってから買い物ですか? それこそ、まさに資源(カロリー)の浪費で循環型社会に反するでしょ。

レジ袋を減らすと何か解決するのか? → 何も解決しない。

レジ袋を減量化を進めるうえでの直接の法的根拠となっているのは、改正容器包装リサイクル法ですが、その背景は廃棄物の排出量の増大と最終処分場のひっ迫です。

3R 容器包装リサイクル法:容器包装リサイクル法の概要環境省HP)

排出量が増大すること自体が問題なのだとすると循環論法となりますので、おそらく最終処分場がひっ迫し、その確保も困難な状態でゴミの排出量が増大していることが法の背景であり、レジ袋を減らしたい理由もこのことになるのでしょう。

それでは、レジ袋を減らすと最終処分場の逼迫の解決となるのでしょうか。残念ながら、全く解決にならないといわざるを得ません。環境省の「容器包装廃棄物の使用・排出実態調査の概要(平成27年度)」によると、全体の家庭用ゴミにおけるレジ袋の湿重量に占める割合は、主要8都市でみると平均0.6%にすぎません。ゴミの業務用と家庭用の比率が、だいたい40%:60%ですから、さらに減って0.36%程度に過ぎない*1のです。3R 容器包装リサイクル法_容器包装廃棄物の使用・排出実態調査の概要(平成27年度) (環境庁HP) まさに焼け石に水なのです。

東京都(法的には区市町村)が何よりも真っ先にやらなければならないの仕事は、レジ袋の有料化では決してなく、都内での最終処分場の建設、もしくは域外での引き取り先確保に他なりません。レジ袋なんかでで油を売っている暇は全くないのです。

戦前の金属類回収令と類似、大局観の全くない全体主義政策

問題を解決するための政策を打たず、「循環型社会」の標語の下で国民全体の奉仕をあおるレジ袋有償化は、「欲しがりません、勝つまでは」の標語の下で行われた戦前の金属類回収令のような全体主義政策とダブります。問題解決はなおざり、精神主義が優先され、社会を息苦しくしては決してなりません。

受動喫煙の問題同様、東京オリンピックの名の下、民主的なプロセスがないがしろにされ、あらゆる物事が決定されていく全体主義へと現在の政治は向かっているような気がします。

 

追伸:

償うものが明らかではないため、本ブログでは「有償」や「無償」という言葉を敢えて「有料」「無料」としました。言葉の言いかえによる世論誘導を強く感じたからです。

*1:容積率比だと、8都市平均4.8%、全体の2.88%だが、最終処分場のひっ迫の観点から湿重量比を採用しました。