Nikkei225オプション日記

日経225オプションをこよなく愛するためのサイト

日本禁煙学会がやってきたこと。受動喫煙でメディアに登場する日本禁煙学会の実態

f:id:suguruyoshida38:20170504111555j:plain

タバコを吸わない私は、ブログを始めるまで「日本禁煙学会」という存在を知りませんでした。厚生労働省が国会提出を目指す改正健康増進法の案についての報道がなされるたび、その内容と私が考える自由な日本社会の在り方について大きなギャップがあり、ちょっと厳しめの意見をブログに投稿しました。ブログをはじめて、1年もたっておらず大した影響力もない投稿に対し、どこでその情報を知ったのかわかりませんが、驚くべき速さでTwitterの反論意見が寄せられました。「日本禁煙学会」の理事を務める稲本望さんからのものでした。

「日本禁煙学会理事」と言っても、どのような学会なのか、偉い人なのか、私自身も積極的に知ろうとするつもりがなかったので、しばらくの間そのままにしておきましたが、驚いたのは、この方がその後の受動喫煙禁止を巡るニュース報道でたびたび登場してきたからです。

www.nikkei.com

「おお、俺のブログの社会的影響度もなかなかのもんじゃないか。」と日本禁煙学会の特質を知る前の私が誤解したのは言うまでもありません。

日本禁煙学会の特質

日本禁煙学会は、学会と名乗るものの、象牙の塔でこじんまりとやっている一般の学術団体とは真逆で、かなりのアクティビティな団体です。日本禁煙学会のホームページを見て今更ながらに本当に驚きました。これまでの日本禁煙学会の活動を振り返ると、新聞記者を𠮟りつけ、テレビや映画の喫煙描写に抗議文を送り、喫茶店の経営に口をはさみ、政治家や政党には踏み絵を迫るがごとく、受動喫煙に賛成か、反対なのかのアンケートを送ってプレッシャーをかける。タバコの元締め日本たばこ産業JT)に対しては販売活動のみならず、企業メセナ的な社会貢献活動も条約違反と言って自粛するように要請。まあ、本当に情熱的かつ活動的な団体です。

メジャーになった日本禁煙学会

そうした活動が功を奏してなのか、タバコ反対派が世間の多数を占めるようになってのことなのか、全国紙、キー局をはじめとしたマスメディアは、最近、タバコの反対派の代表として頻繁に日本禁煙学会の見解や意見を掲載したり、放送するようになってきました。しかしながら、これだけメジャーになっているにもかかわらず、この日本禁煙学会がこれまで行ってきた活動や歴史について、タバコを吸わない方々はほとんど知らないのではないでしょうか。そして、一般の読者、視聴者といった情報の受け手側は、学会という名称から、日本禁煙学会について、無色透明で、政治的色の薄い通常の学術団体をイメージします。一方で、タバコ擁護派である勢力は、「飲食関連団体」「タバコ関係者」として括られてしまい、意図的ではないにしろ、お金の問題(利権)として、ネガティブな政治的色付けがされて受け手に伝達されています。日本禁煙学会のこれまでの歴史を知った後、私は、現在の報道は些かバランスを欠いているように思いました。メディアは日本禁煙学会のコメントを報じるのはいいのですが、その際には併せて、これまでの学会の取り組みについて国民に伝える必要があるのではないかと思いました。

日本禁煙学会がこれまでやってきたこと

日本禁煙学会の活動の歴史は、学会のホームページに事細かく記載されています(ACTION 日本禁煙学会)。活動のすべてをこのブログで伝えることは非常に難しいため、タバコの吸わない人々が知っていた方がよいと私が考えるものをピックアップしてお伝えします。

<テレビ番組・映画作品などに対して>

主として、テレビや映画での喫煙シーンが青少年の喫煙に影響を与えることを根拠にして、映像作品から喫煙シーンをなくすことを要望、主張しています。

日時 内容(リンク付き)
2013/8/12 映画「風立ちぬ」でのタバコの扱いについて要望書を送付
2012/8/7 映画の喫煙シーンについての要望書を送付
2010/10/4 熊本市民劇場例会の劇中喫煙の禁止要請書を送付
2009/12/3 NHK「ためしてガッテン!」(2009年11月25日放映)の重大な誤りに対する訂正放送の要請(WORDファイル465KB)
2008/8/26 映画「西の魔女が死んだ」の喫煙シーンについての日本禁煙学会の見解
2008/8/10 映画「スカイ・クロラ」の喫煙シーンについての質問状を送付(PDFファイル115KB)
2007/8/16 萩本欽一氏のウルトラマラソンに関する日本禁煙学会の見解
2007/3/30 植木等氏の喫煙に関する日本禁煙学会の見解
2006/6/5 漫画、テレビアニメ「NANA」の喫煙描写に対する抗議文・要請と回答

 ※その他、タバコのシーンのない映画を「無煙映画大賞」として表彰し、タバコシーンのある映画の中から、汚れた灰皿賞(モクモク賞)を選定しています。

JT日本たばこ産業)の企業活動に対して>

FCTC(たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約)を根拠として、JTの活動をたばこ販売のみならず、CSR活動(企業の社会的責任の観点からの自発的活動)にまで広げて制限を加えようとしています。喫煙マナー向上のJTの取り組みにもNOを突き付けています。

日時 内容(リンク付き)
2014/3/13 国際法違反の「たばこと塩の博物館」と「JT生命誌研究館」の閉鎖を求める声明を掲載
2013/10/28 緊急声明「タバコ会社の元社長をNHKの経営委員に就かせるべきではない」を送付・掲載
2013/7/16 「JTの「奨学金」は国際条約に違反―白紙撤回を求める声明」を送付・掲載
2012/1/31 オブザーバー紙記事「JTIがシリアの独裁支配者にタバコを出荷「アサドのテロ行為への資金供給」を行った疑い」の邦訳版を掲載
2011/12/1 JTによるバレーボールを含む違法なCSR活動の中止要請(1)
2009/4/2 声明「JTは、まやかしのCSR活動(企業の社会的活動)をただちにやめるべきである」(PDFファイル79KB)
2008/8/8 喫煙科学研究財団の解散勧告を喫煙科学研究財団理事長およびすべての役員・評議員に送付(PDFファイル164KB)
2007/4/16 JT主導の「未成年者喫煙防止キャンペーン」に反対する声明
2006/9/20 JTと浜松市が共同で設置した「浜松マナー灰皿」撤去要請(浜松市長・JT静岡支社長宛送付)
2006/6/18 たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)違反の『JT喫煙マナー向上キャンペーン「生協の白石さん編」』の中止を求める

<交通機関に対して>

新幹線における喫煙車両は、2017年3月7日のダイヤ改正によりなくなっています。ただ、喫煙ルームについては現時点でもJR東海JR九州の新幹線に設置されています。早くから、この喫煙ルームを廃止するようJR側に要請しています。分煙NO、完全禁煙の立場です。

日時 内容(リンク付き)
2013/10/21 JR東海リニア新幹線駅構内の禁煙を求める要望書を送付
2009/7/9 N700系の車両の喫煙室を廃止し完全禁煙を求める要望書(JR東海宛て)
2007/10/26 JR東海に対するN700系車両全面禁煙の要請
2007/7/23 東京旅客乗用車協会宛てタクシー全面禁煙化要望書
2006/12/11 JR特急「しなの」「あずさ」の全車禁煙化要請(国土交通大臣、JR東日本社長、JR東海社長に送付) →JR東日本・JR東海から回答あり

<一般企業などに対して>

日時 内容(リンク付き)
2010/10/14 東京ディズニーリゾートへの受動喫煙対策に関する要望
2008/9/8 秦野たばこ祭りについて秦野市へ要望書を送付
2006/8/31 ドトールコーヒーに全席禁煙化の意見書送付

<メディアに対して> 

個人的には、中日新聞担当常務の記事に対する抗議とそのやりとりが面白いと思いました。JTの広告を掲載することは条約違反だということや最近では産経新聞世論調査をフェイクニュースととらえられても仕方がないと論じてます。

日時 内容(リンク付き)
2017/3/31 「御社の世論調査および報道の在り方について。産経/ FNN合同世論調査」
2012/10/21 週刊朝日記事に対する質問状(2)を送付し、続報のページに掲載
2012/10/4 週刊朝日2012/9/28号の記事に対する緊急声明の続報(質問状と回答、記事の疑問点)
2012/9/21 週刊朝日9月28日号の記事に対する日本禁煙学会の緊急声明
2007/7/13 禁煙タクシーに関する7月12日付け毎日新聞記事に対する抗議(7/13)とその回答(7/19)
2007/6/18 日本経済新聞社に対するFCTC遵守要請
2007/4/30 中日新聞編集担当常務の記事に対する日本禁煙学会の抗議と質問および回答(中日新聞編集担当常務小出宜昭氏に送付。回答は5月9日および14日に電話にて。)
2006/11/11 週刊ポスト平成18年11月17日号記事に対する申入れ

<司法に対して>

日時 内容(リンク付き)
2012/10/16 東京地裁での受動喫煙訴訟が勝訴確定し概要や原告の思い、要望書などを掲載
2012/10/10 盛岡地裁の受動喫煙訴訟不当判決への抗議文
2012/2/14 タバコ病訴訟について東京高裁に公正判決の要請書を提出(PDFファイル264KB)
2008/4/11 「国民の公正な裁判を受ける権利」を求める申し入れ

以上、日本禁煙学会のこれまでの歴史、活動を振り返ってまいりました。タバコや禁煙に関する調査研究を行う学術団体というよりは、日本の完全禁煙を実現するために行動する政治的色彩の強い団体であると言えそうです。