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フジテレビ「報道2001」。 都議選、自民敗因の分析が酷すぎる。

Fuji TV headquarters and Aqua City Odaiba - 2006-05-03-2009-25-01
(フジテレビ本社ビル 出典:Wikimedia Commons)

都議選の敗因は安倍首相?。はぁ?

動画サイトで久しぶりに、テレビの報道番組を見て本当にびっくりしました。フジテレビ「報道2001」における都議選自民惨敗の分析についてです。どのような方がこの番組を制作しているのか知りませんが、思い込みと結論ありきの分析、番組構成に唖然としました。内部で誰も反対しなかったのでしょうか。テレビメディア関係者の仕事の水準について首をかしげざるを得ませんでした。

都議選での自民党惨敗の原因を安倍首相の「こんな人に負けられない」という街頭演説に求めたいというフジテレビ側の意図はわかりましたが、その誘導の仕方があまりに無理筋で、失笑を禁じ得ませんでした。女性アナウンサーが「ビックデータ」という単語を発する度に、その声色がいかにも自信なさげで、言わされているのよといった感が垣間見えました。単なるGoogle Trendsのキーワード検索を「ビッグデータのよる」などと権威付けしていることや主張における論理のあまりの飛躍に原稿を読み上げているアナウンサー自身も恥ずかしさを感じていたのかもしれません。そう感じさせるほどフジテレビの主張は、事実(ファクト)と結論との間を結ぶ論理が完全にすっ飛んでいるのでした。

フジテレビ側の主張のまとめ

番組における自民党大敗の分析について、簡単にまとめます。

  • 選挙期間中の自民党の失態は、4つ(豊田真由子議員の秘書へのパワハラ、稲田防衛大臣の発言、下村都連会長の政治資金問題、安倍首相の街頭演説)。
  • この4つの事象を時系列に横軸として並べ、選挙期間中のキーワード検索やSNSの書き込み件数を縦軸としてグラフ化。
  • 最後の安倍首相の街頭演説までに、前の3つの事象のキーワード検索回数は低下したので都議選の投票行動に影響は少なかったと考えられる。
  • 選挙一週間前の自民党の選挙分析では、40議席はいく予測が出ていた。
  • 安倍首相の投票日前日の秋葉原での街頭演説(安倍辞めろコールに「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と応じた)後に「安倍首相」というキーワードが他の3つの事象の検索件数等よりも数が多かったので、敗因は安倍首相にある。

新報道2001 20170709 - YouTube 20:32あたりから

フジテレビの論理の飛躍と印象操作について

番組内でも、日本維新の会の足立議員が指摘していた通り、他の議員よりも安倍首相の検索件数は元から断然多いのです。こうした場合、通常時の検索件数や書き込み件数と比べてどのくらいの比率で(何倍に)上昇したのかということがきちんと説明されなければなりません。通常の状態が100件程度で、それが3万件に上昇(300倍・30,000%)したものと元から3万件あったものが約15万件に増大(5倍・500%)したものをただ検索件数の絶対数で比較し、安倍首相が一番の戦犯だというのです。さらに言うと、フジテレビや選挙コンサルタントは、安倍首相第一戦犯説を導く過程で、検索エンジンの検索件数やSNSの書き込み件数と投票行動が一致するという完全な思い込みをしています。果たして、検索エンジンの検索件数やSNSの書き込み件数と投票行動は一致するのでしょうか。逆に検索回数が減るとそれは選挙行動に関係なくなるのでしょうか。それは一致することもあれば、一致しない時もあるという極めて不確実性の高いものです。その時の状況を冷静に振り返って見なければわかりません。しかしながら、フジテレビはそういった検証もせず、番組の中で、安倍首相の「こんな人たちに負けるわけにはいかない」という演説部分を何度も何度も繰り返して放送し、人々の意識の中に刷り込みを図るかのような編集をしています。まさに戦時プロパガンダ顔負けの印象操作、世論誘導に他なりません。

なぜ秋葉原の街頭演説後に「安倍首相」のワードが伸びたのか?

さて、秋葉原の街頭演説後に「安倍首相」のワードがなぜ伸びたのでしょうか。その当日、ネットでは安倍首相の演説会場にに籠池夫妻がやってくるという一大イベントが催されています。籠池氏が演説会場で暴れている情報がSNSを中心に広がりました。その後「安倍辞めろコールが起こっている」というニュースも聞こえてきました。私自身は仕事が忙しかったので、また左翼陣営がしょうもないイベントを創作しているなあと無視できましたが、ちょっと興味のある人は検索エンジンを叩いて、覗いてみたというのが真相ではないでしょうか。何というか麻原彰晃の裁判の時のあの横山弁護士を見たいような感覚でです。また、帰宅してから「安倍辞めろコールの真相」をネットで確認した人も多かったと想像できます。まあ、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」なんてことよりも、「籠池夫妻」と「安倍辞めろコール」に魅かれてというのが、「安倍首相」のワードが伸びた主要因であるといえるでしょう。

安倍一強がマスメディアにとって都合が悪い理由

こんな当たり前のことを何故に、フジテレビ「報道2001」は東京都議会選挙と無理矢理結び付け、安倍首相が第一戦犯だという印象操作を行ったのでしょうか。保守の系譜をひくメディアのフジテレビで、こうした印象操作が行われていますので、政治思想とはあまり関係がないでしょう。そこで私もフジテレビのように自己の想像を逞しくし、マスメディアもまた権力であるということを述べたいと思います。

マスメディアの世界にいる人たちののプライドの源泉は、おそらく、総理大臣は俺たちが決めるのだとか、流行は自分たちが作り出すのだとかいうような社会一般に影響力を及ぼせるという点にあるのでしょう。しかしながら、安倍一強と呼ばれる現在の政権は、マスメディアの影響力から完全に飛び出し、逆にメディアに対して影響を及ぼす存在となっています。本来、時の政権もマスメディアにとっては、掌の上で回る小さなもの、自分たちのコントロール下にあるものであってほしいのです。この考えは、マスメディアのよって立つ政治思想を軽く超えて行くのです。何か具体的なことをしたいのではなく、具体的なことをできる影響力を持つための行動を優先するというマスメディアの現実は、政治世界の「政治は政策論争よりも権力闘争である」という現実と全く同じことなのです。

マスメディアは権力そのものであるということをこのフジテレビ「報道2001年」における印象操作はまた裏付けてくれました。自分たちより力がある者の力を削ぐことこそ、何にもまして権力機関には重要なことなのです。そりゃ、実力十分と自ら恃むところあり、かつ意味不明に稲田さんに交代させられた中谷前防衛大臣を利用するに越したことはないよね。