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テレビコメンテーターや芸能人の発言はニュースなのだろうか? ポータルサイトのニュース記事について考える。

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神戸新聞社デイリースポーツ事業本部のあるエコール・マリン 出典:Wikimedia Commons)

WEBニュースの違和感。原因はポータルサイトMSN上のデイリースポーツ

まあ、本当にどうでもいいと言えば、どうでもいいことなのですが、最近のポータルサイトのWEBニュースを見ていると違和感を覚えます。ポータルサイトというと限られてしまうので面倒くさいので敢えて言いますと、MSNです。私自身がLive mailやOnedriveなどのマイクロソフトが提供するサービスを多く利用し、MSN*1を頻繁に目にしているのでそう感じているのかもしれません。何か記事の質が落ちたように思えたのです。おかしいなあ、おかしいなあと思っていましたが、本気になって突き止めようと重い腰を上げて自身のネットサーフィンの振り返りをし、その原因をつきとめました。原因は本当にはっきりしていました。違和感の元は、MSNの中にあるデイリースポーツが提供している芸能ニュース(記事)です。

MSNの中にあるデイリースポーツ紙の記事の特徴

MSNで提供されているデイリースポーツの記事の特徴として、テレビ番組の中で芸能人やコメンテーターが発言したことをそのまま記事にしていることがあります。さらに悪いことに、発言自体に社会的な波紋を投げかけるような部分が見当たららない発言にもかかわらず、発言の背景や記者の視点というか批評が全くないのです。もっと言うと、煙がくすぶっているところに油を入れたろかという煽りの精神すらデイリースポーツの記事には全く感じられないのです。はあ?とか、だから?と毎度毎度思わざるを得ません。具体的にここ数日の記事を見ていきましょう。

八田亜矢子 ミス東大時代は次々に彼氏「自分がカワイイと本当に思っていた」

東大出身のタレント・八田亜矢子(32)が1日放送のカンテレのバラエティー「歴代王者に聞いてみた」に出演。「ミス東大」に輝いた大学時代、元彼と別れて1日あるかないかの間に、次の彼氏が出来ていたとモテっぷりを明かした。司会の極楽とんぼ加藤浩次(48)に「その時、彼氏はいましたか?」と尋ねられると「はい」と素直に返答し「でも1年くらいで別れました」と説明。しかし「その次は?」と尋ねられると「東大生でした」と、次々に彼氏ができていたことを告白。ついには「確かにあの時は、人生がすごい楽しかった」と話した。また、加藤から「新しい彼氏ができるまでどのくらいスパンがあったか」と聞かれると、八田は笑いながら「1日あったかな…」と答え、場内は「エ~ッ」と驚きの声に包まれた。八田は「その時は自分がカワイイと本当に思っていた」と本音をちらり。ゲストのお笑いコンビ・ハリセンボンらから「ほら~っ」と怒りの声が上がっていた。

(2017年7月1日配信 デイリースポーツ)

松本人志「ネタを聞きたい」と認める芸人4、5組…サンド、東京03、バイきんぐ

ダウンタウン松本人志が30日、フジテレビ系「ダウンタウンなう」に出演し、ネタを聞きたいと認める芸人が4、5組いることをあげた。1組はゲスト出演したサンドウィッチマンであることを明かした。坂上忍が「サンドさんネタはすごい?」と尋ねると、松本は「面白い」と真顔で答えた。松本は「パッとテレビつけた時にネタをやってても…別に見なくていいかなとチャンネルを変える芸人はいっぱいいるけど、4、5組くらいはこいつらのネタは聞きたいと思う」と話した。その芸人がだれなのかツッコまれ、松本はサンドウィッチマン、東京03、バイきんぐをあげた。

(2017年7月1日配信 デイリースポーツ)

さんま 62歳を嘆く「ゾッとするね」 7月1日の誕生日が知れ渡り…タレントの明石家さんま(62)が62歳の誕生日を迎えた1日、MBSラジオ「ヤングタウン」に出演し、「ゾッとするね」「62(歳)祝ってもなあ」と嘆いた。国民的な人気タレントとあって、「俺が7月1日生まれっていうのもけっこうな人が(知っている)。1日に店、行けないんですよ。(誕生日でサービスしてもらっても)照れるし、しんどいしね。今日でももう、ホテルをチェックアウトする時でもホテルの人が『誕生日おめでとうございます』とか」と、誕生日が知れ渡っていることの面倒くささをぼやくことしきり。 番組後半では改めてさんまの誕生日が祝われ、レギュラーのタレント・村上ショージ(62)、モーニング娘。’17・飯窪春菜(22)と工藤遥(17)、ゲストのラベンダー・田中れいな(27)が「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー」を合唱した。 プレゼントにピンクのシャツや高級歯磨き粉などを次々と渡され、女優・内田有紀(41)や落語家・笑福亭鶴瓶(65)の祝福メッセージが流されると冒頭のボヤキは雲散霧消。「60歳にしてはピンクの似合う男ベストワンやからね」などとゴキゲンだった。

(2017年7月2日配信 デイリースポーツ)

まあ、こんな具合なのです。記事は以下に示す一定の規則に沿ってほぼ書かれています。

・[芸能人又はコメンテーター] は

・[テレビ局名] の [番組]で、[発言内容] と発言した。

・[以下、テレビ番組の内容]

[ ](カッコ)の部分を入れ替えているだけです。そして、取材もせず家でテレビを見てそのまま書いているのではないかと想像できます。まあ、MSNに提供する記事など金にならないから、少ない時間で、できるだけ予算を抑えて記事を提供してやれということなのでしょうか?。それでも、例えば、2番目の「松本人志が認める芸人」記事を書くならば、補足として、取り上げられた芸人さんの持ちネタの内容、特徴などを調べて、読者に有意義となる情報くらいは提供してもいいのではないでしょうか。背景なし、解説なし、まさに情報の垂れ流し。私自身は、記事内容を分析していて、これはAIを使ったニュース記事作成の実験なのかと一瞬思いました。いや、AIならもっとちゃんとした記事が作成できるよね。まあ、いずれにしても、デイリースポーツの記事には一定の水準というものが確保されていません。

私が考えるニュースの価値

デイリースポーツを一方的に批判するだけでは建設的ではないので、わたしがどのような考え方に基づいて批判しているのかについて、きちんと明らかにしておきます。私が考えるニュースの価値は次の原則に沿っています。

  1. 一次情報性
  2. 読者(視聴者)の具体的な関心度
  3. 社会的影響(政治過程への影響)
  4. 問題の構造や背景となる事実の提供
  5. 記者の目からの視点、解説、批評など
この原則に照らして、例として挙げた3つのニュースについて思うに、1.についてはテレビの番組内の出来事ですから、テレビが一次情報となるのであてはまらない。2.については、野球やサッカーの結果なら観戦できなかったり、テレビを見逃してしまった方にとっては単なる事実でも関心があるところですが、いくらテレビ番組に関心があって見逃した方でも、明石家さんまさんや松本人志さんが特定の分野について、何を言ったかということまで関心はないでしょう。3.については論外。4.や5.については何とか記事内容にすべりこませることができるのでしょうが、デイリースポーツはそれすら行っていないのです。だからこそ、はぁ?ということが頻発していたのです。

ポータルサイトの記事構成の影響について

「嫌なら見るな」と言えば簡単のことではあります。しかし、今ある主要ポータルサイトの国民に対する影響力は非常に大きなものとなっています。ポータルサイトがどのような記事をどれだけのスペースで割いているかということについて、国民はもう少し考える必要があるのではないかと思います。個々の具体的記事内容を問題にしているのではありません。私が問題にしているのはその形態です。それは、芸能人やコメンテーターの日常生活の単なるおしゃべりがポータルサイトに大きなスペースとして割かれてしまっているということなのです。私の危機感としてあるのは、本来、価値がないものが、いつの間にか価値のあるものへと徐々に刷り込まれていき、肝心なことを見失っていくという問題です。やはり、松本人志さんがネタを聞きたい芸人が誰なのかということが重要なのではなく、紹介されたその芸人のネタの価値は如何ばかりなのかということが肝心であり、論じられるべきことであると思うのです。

悪貨は良貨を駆逐する。

MSNの記事の掲載は、それはネット企業ですから、きちんとPV分析を行っていて、掲載されている記事は国民の関心のあるものなのかもしれません。ただ、私のようにキャプションとかサムネイル画像に読者が騙されてその記事に誘導された可能性は十分にあります。そして、記事を見てがっかりする。がっかりが次第にがっかりではなく、自然なものへと慣らされ、コメンテーターや芸能人の発言自体が価値のあるものだと思い込むように次第に誘導されていく。こうしたメディアの形態に潜む危険性が、高名なマーシャル・マクルーハンの「メディアはメッセージである」という言葉の本質です。こうした危険性を現在のMSNに掲載されたデイリースポーツの記事は孕んでいます。悪貨は良貨を駆逐するのです。

MSNはポータルサイト運営者の社会的責任の観点から、デイリースポーツに対し、この手の記事を窘めて、良質な記事を掲載するように努力すべきだと思います。このままいくと、LiveメールをPCで利用する日本国民は、知らず知らずのうちに白痴化していく嫌な予感が私にはしています。

*1:The Microsoft Networkの略。マイクロソフト社が運営するポータルサイト。日本では2004年~2007年は毎日新聞、2007年~2014年は産経新聞と提携し主として提携紙のニュースを配信。2014年10月には産経新聞との提携を解消し、複数紙の記事を配信するようになっている